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シクロクロスにおける低体温症対策について


今シーズン東海シクロクロス実行委員会と救護業務の協定を締結させて頂きました公益社団法人地域医療振興協会 関市国民健康保険津保川診療所 廣田様より低体温症について貴重なレポートを頂きました。専門的な情報につき、東海シクロクロス以外でも使える情報なので、ぜひ共有下さい。

今週末のレースは雨天予報ですね。

悪天候は落車に伴う怪我だけでなく、低体温症の心配もしなければなりません。注意喚起も含めて、救護の要請と同時にその場で取りかかって頂きたい事と予防についてお伝えしようと思います。

シクロクロスは冬の競技ですから、高強度の運動中にもかかわらず、悪条件が揃えば低体温症を引き起こします。雨天や降雪で身体が濡れて、強風が重なると容易に体温が下がります。寒さ、風、濡れた身体の3つが揃うと危険が高まります。

低体温症は以下の表のように4つの重症度に分けられます。中度以上は救急搬送して迅速に病院での治療を開始しなければなりません。ですから、軽度や前兆段階での適切な対処が必要です。


低体温症の重症度

 

重症度

ふるえ

意識

およその体温

軽度(Ⅰ度)

あり

正常

3235

中度(Ⅱ度)

減少か消失

錯乱から混濁へ

2832

高度(Ⅲ度)

なし

なし

2438

重度(Ⅳ度)

なし

なし

24℃未満

 

第一に、いち早く低体温症に気付くことです。レース中で高強度走行中にもかかわらず、制御不可能にガタガタと身体が震え、寒さで身体が動かしにくくなったら、「低体温症かも」と思って下さい。雨や雪で身体が濡れていればその可能性は高いです。重篤化を防ぐには、迅速に身体を温めなければなりません。表彰台にからめそうもなく昇格も望めそうでなければ、ポイント獲得には残念ですが、DNFも選択肢に入れて下さい。

次に、車中やテントなど、風を遮りこれ以上濡れない場所に移動します。自力で動けない場合は、チームメイトやコースマーシャル、あるいは周囲にいる誰かに助けを求めて連れて行ってもらって下さい。そして、濡れたジャージやワンピースを脱いで、乾いた保温性の高い衣服に着替えて下さい。濡れたジャージが身体にくっついたり、身体が動かなかったりして自分で脱げない場合は、周りの人がハサミで切って脱がします。言うまでもなく女性の場合はご配慮をお願いします。これらを同時並行で行いつつ救護にお知らせ下さい。

最後に、車中なら暖気、テントならストーブなどで暖をとり、首や腋窩、そけい部(両側なので可能なら6箇所です)をカイロや湯たんぽなどで温めます。高糖質の暖かい飲み物を飲んで中から温めます。ただし、意識がはっきりせず誤嚥の可能性がある場合は飲ませてはいけません。

以上が誰もが知っておいて頂きたい救急処置ですが、予防も重要です。先に述べた3つの条件を防ぐこと、防寒、防風、撥水です。ウエア選びは天候に合わせて入念に行って下さい。腹部と背部を冷やさない工夫がオススメです。透明のゴミ袋を頭と腕のところに穴を開けて着るのも安価で良い手です。脚部については悩みます。私は、濡れてビタビタになりそうならレッグウォーマーを着けません。撥水加工がない濡れた衣服は体温を奪うからです。素脚にワセリンやレインジェルを塗って撥水させます。塗る範囲は臀部や腹部・背部までです。

準備8割と言いますが、天気予報を見ながら準備をするのもレースの楽しみですね。

それでは、安全で楽しいレースデイになりますように!

公益社団法人地域医療振興協会 関市国民健康保険津保川診療所 廣田